次の主張の真偽として正しいものを以下の選択肢から選びなさい。
「上三角行列と上三角行列の積は上三角行列である。」
正しい
正しくない
例えば $3$ 次の上三角行列の場合
$\begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13} \\ 0 & a_{22} & a_{23} \\ 0 & 0 & a_{33} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} b_{11} & b_{12} & b_{13} \\ 0 & b_{22} & b_{23} \\ 0 & 0 & b_{33} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a_{11}b_{11} & a_{11}b_{12} + a_{12}b_{22} & a_{11}b_{13} + a_{12}b_{23} + a_{13}b_{33} \\ 0 & a_{22}b_{22} & a_{22}b_{23} + a_{23}b_{33} \\ 0 & 0 & a_{33}b_{33} \end{pmatrix}$
となり, 上三角行列となっていることがわかる。
より一般に, $2$ つの $n$ 次上三角行列 $A$, $B$ の $(i,j)$ 成分をそれぞれ $a_{ij}$, $b_{ij}$ とすると, $AB$ の $(i,j)$ 成分は
$\displaystyle \sum_{k=1}^na_{ik}b_{kj}$
と表せる。また, $A$, $B$ は上三角行列であるから
$j\lt i$ ならば $a_{ij} = b_{ij} = 0$
であることに注意する。
$j \lt i$ の時, 各 $k = 1,2,\cdots n$ に対して
- $k \leqq j$ の時 $a_{ik} = 0$
- $j \lt k$ の時 $b_{kj}=0$
よって
$\displaystyle \begin{eqnarray*} \sum_{k=1}^na_{ik}b_{kj} & = & \sum_{k=1}^{j} a_{ik}b_{kj} + \sum_{k=j+1}^na_{ik}b_{kj}\\[1em] & = & 0+0=0 \end{eqnarray*}$
よって $AB$ の $(i,j)$ 成分は $0$ となり, $AB$ は上三角行列であることがわかる。
次の主張の真偽として正しいものを以下の選択肢から選びなさい。
「下三角行列と下三角行列の積は下三角行列である。」
正しい
正しくない
例えば $3$ 次の下三角行列の場合
$\begin{pmatrix} a_{11} & 0 & 0 \\ a_{21} & a_{22} & 0 \\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} b_{11} & 0 & 0 \\ b_{21} & b_{22} & 0 \\ b_{31} & b_{32} & b_{33} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a_{11}b_{11} & 0 & 0 \\ a_{21}b_{11}+ a_{22}b_{21} & a_{22}b_{22} & 0 \\ a_{31}b_{11} + a_{32}b_{21} + a_{33}b_{31} & a_{32}b_{22} + a_{33}b_{32} & a_{33}b_{33} \end{pmatrix}$
となり, 下三角行列となっていることがわかる。
より一般に, $2$ つの $n$ 次上三角行列 $A$, $B$ の $(i,j)$ 成分をそれぞれ $a_{ij}$, $b_{ij}$ とすると, $AB$ の $(i,j)$ 成分は
$\displaystyle \sum_{k=1}^na_{ik}b_{kj}$
と表せる。また, $A$, $B$ は下三角行列であるから
$i \lt j$ ならば $a_{ij} = b_{ij} = 0$
であることに注意する。
$i \lt j$ の時, 各 $k = 1,2,\cdots n$ に対して
- $k \leqq i$ の時 $b_{kj} = 0$
- $i \lt k$ の時 $a_{ik}=0$
よって
$\displaystyle \begin{eqnarray*} \sum_{k=1}^na_{ik}b_{kj} & = & \sum_{k=1}^{i} a_{ik}b_{kj} + \sum_{k=i+1}^na_{ik}b_{kj}\\[1em] & = & 0+0=0 \end{eqnarray*}$
よって $AB$ の $(i,j)$ 成分は $0$ となり, $AB$ は下三角行列であることがわかる。
次の主張の真偽として正しいものを以下の選択肢から選びなさい。
「上三角行列の転置行列は上三角行列である。」
正しくない
正しい
$A= \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}$
とすると $A$ は上三角行列であるが
${}^tA = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 1 & 1 \end{pmatrix}$
となり, これは上三角行列ではない。
よってこの主張は正しくない。
より一般には, 上三角行列は対角成分より下の成分が $0$ なので, その転置行列は対角成分より上の成分が $0$ となる。
すなわち上三角行列の転置行列は下三角行列である。
次の主張の真偽として正しいものを以下の選択肢から選びなさい。
「下三角行列の転置行列は下三角行列である。」
正しくない
正しい
$A= \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 1 & 1 \end{pmatrix}$
とすると $A$ は下三角行列であるが
${}^tA = \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}$
となり, これは下三角行列ではない。
よってこの主張は正しくない。
より一般には, 下三角行列は対角成分より上の成分が $0$ なので, その転置行列は対角成分より下の成分が $0$ となる。
すなわち下三角行列の転置行列は上三角行列である。
次の主張の真偽として正しいものを以下の選択肢から選びなさい。
「どんな行列も上三角行列を右から掛けると上三角行列になる。」
正しくない
正しい
$A = \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 1 & 1 \end{pmatrix}$
$B = \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}$
とすると
$AB = \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 1 & 2 \end{pmatrix}$
となり, これは上三角行列ではない。
よってこの主張は正しくない。
次の主張の真偽として正しいものを以下の選択肢から選びなさい。
「ある行列が上三角行列かつ下三角行列であれば, それは対角行列である。」
正しい
正しくない
対角成分より下の成分が全て $0$ である行列が上三角行列であり,
対角成分より上の成分が全て $0$ である行列が下三角行列である。
上三角行列かつ下三角行列であれば, 対角成分以外の成分が全て $0$ であるから, それは対角行列である。