4-7 歯車

歯車の種類

歯車は、機械装置の中でも最もポピュラーな機械要素のひとつです。ここでは、一般的によく使われる歯車を紹介します。

• 平歯車

歯車の中で最もよく使われているのが、この「平歯車」です。製作コストが安くすみますが、かみ合う歯の数が少ないので、ひとつの歯にかかる負担が大きくなります。高速回転の場合、騒音が発生しやすいなどの欠点もあります。

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• はすば歯車

この歯車は、軸に対して歯が斜めになっています。このため力を受ける面積が広くなり、同時にかみ合う歯の数も多いので、ひとつの歯にかかる負担も少なくなり、その分騒音も小さくなります。

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• やまば歯車

歯の傾斜方向が正反対のはすば歯車を2つ組み合わせて、軸方向の力を打ち消そうとして作られたのが「やまば歯車」です。これは製作コストが高くつくので、タービンの減速措置など、限られた用途にしか使われません。

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• 内歯車

「内歯車」は、「平歯車」の変形です。歯が円の内側に来ています。

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• ラックとピニオン

棒状になっている方が「ラック」、丸い方が「ピニオン」です。このラックも平歯車の変形で、歯車の直径を無限大にして直線形に歯を配置したものです。回転運動を直線運動に、あるいは直線運動を回転運動に変換するときに使われます。

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• すぐばかさ歯車

2つの歯車の軸が交差している場合に使います。歯筋が円錐の頂点に向かってまっすぐになっている、つまり「すぐば」になっている「かさ歯車」という意味です。

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• まがりばかさ歯車

かさ歯車の歯が斜めのものを「まがりばかさ」といいます。動力伝達能力を向上させたいときに使います。

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• ねじ歯車

2つの歯車の軸が互いに交差しなくて、食い違っている場合の回転を伝えるときに使います。

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• ウォームギア

ウォームギヤは、ウォームとウォームホイールで一対ですが、総称して「ウォームギヤ」と呼ばれています。 比較的小型で大きな減速比が得られるのが特徴です。

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減速比

2つの軸の回転を伝達するときに、駆動側、つまり回転を伝える側と、被駆動側、回転を伝えてもらう側の回転数の比率のことで、「駆動側の回転数/被駆動側の回転数」で表されます。たとえば、「減速比 30」というと、駆動側の軸が30回転したときに、被駆動側の軸が1回転する(30/1=30)ということです。

歯車に関する用語の説明

○ インボリュート歯形

[ 歯形曲線 ] とは、歯車の歯の形状のことです。現在最も一般的な歯車の形状は、[ インボリュート歯形」です。これは、インボリュート曲線の一部を歯形として利用し たものです。インボリュート曲線とは、先端に鉛筆のついた糸を円筒に巻き付け、糸がピンと張った状態でほど いていった場合に、鉛筆が描く曲線のことです。

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その他に「サイクロイド歯形」というものもあります。これは円周上を別の円が転がるときに、その円の一点が描く軌道、サイクロイド曲線を利用したものです。画像

• ピッチ円端数モジュール

○ ピッチ円

[ピッチ円]は、歯車の基準として使われる重要な円です。2 つの円筒の摩擦だけで回転を伝えているとした場合の円の直径のことです。ピッチ円の直径は「d」です。

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○ 歯数

「歯数」は全体の歯の数で、「Z」で表します。

○ モジュール

ピッチ円の直径を歯数で割ったものを[モジュール]といいます。モジュールは「m」で表すのでm = d / Zということになります。

歯数が倍になると、一枚あたりの歯の大きさは半分になります。つまりモジュールは歯の大きさを表していることになります。ピッチ円から歯の先端までの距離を[歯末のたけ]といいますが、この大きさはモジュールと同じです。つまり、モジュールが大きいと歯末のたけも大きいということです。それから、歯の長さを[全歯たけ] といいますが、これは歯末のたけのおよそ2倍になります。モジュールによる歯の大きさを比較してみると、モジュールが大きくなると歯も大きくなることがわかります。

• 各部の名称

  • 歯底円‥‥‥‥‥‥軸方向から見て、歯底を通る円
  • 歯先円‥‥‥‥‥‥軸方向から見て、歯底を通る円
  • 基礎円‥‥‥‥‥‥インボリュート曲線の中心になる円
  • ピッチ円‥‥‥‥‥‥歯と歯の間のピッチ点上の円弧の長さ
  • 円弧歯厚‥‥‥‥‥‥歯の部分の円弧の長さ※円弧の長さは計算で求めることもできますが、実際に測定するのは困難です。そこで「またぎ歯厚」といって、いくつかの歯をまたいで測定することによって寸法の確認をします。
  • 歯みぞの幅‥‥‥‥‥‥溝の部分の円弧の長さ
  • 頂げき‥‥‥‥‥‥相手の歯先円と自分の歯底円との距離※半径方向の“逃げ”。2 つの歯車の軸間の距離が少々ばらついていても、歯先どうしがぶつかることがないようにするため、「頂げき」が必要です。
  • バックラッシ‥‥‥‥‥‥ピッチ円上での歯車の歯みぞの幅と相手の歯厚の間のすきま※円弧方向の“逃げ”。
  • 圧力角‥‥‥‥‥‥ピッチ点から基礎円に接線を引き、その接点から軸の中心に垂線をおろします。このとき2 つの軸を結ぶ直線と垂線とのなす角度が「圧力角」です。※JISで20°と規定されています。
  • 歯末のたけ‥‥‥‥‥‥ピッチ円から歯の先端までの距離
  • 歯元のたけ‥‥‥‥‥‥ピッチ円から歯の底までの距離
  • 全歯たけ‥‥‥‥‥‥歯の長さ
  • 歯 幅

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• 歯車の製作

○ 標準歯車

加工するとき、ラック工具の基準ピッチ線と加工される歯車の基準ピッチ円が接するようにして歯切りしたものを[標準歯車]と言います。

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○ 転位歯車

基準ピッチ線をずらすことを[転位]といいます。転位させて加工した歯車を、[転位歯車]と呼びます。ずらす量は、転位係数xとモジュールmをかけた値、xmになります。これを転位量と呼びます。

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転位の必要性

歯数の少ない歯車の場合、ラック工具の歯先が相手の歯元に当たって正常なかみ合いができなくなる場合があります。これを[歯の干渉]と呼びます。歯切りのときに歯の干渉がおこると、相手の歯元が削り取られて歯が弱くなります。これを[アンダーカット]あるいは[切り下げ]といいます。このアンダーカットを避けるために転位を行うのです。

○ 特殊歯型

歯には、低歯、並歯、高歯があります。

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  • 並歯‥‥‥‥‥‥歯先のたけがモジュールに等しいものです。ここまでは並歯について説明してきました。
  • 低歯‥‥‥‥‥‥並歯よりも歯たけが低いものです。アンダーカットは生じませんがその他の性能がよくないので現在では転位歯車に変わりつつあります。
  • 高歯‥‥‥‥‥‥歯たけが並歯より高いものです。特殊な用途以外は使われません。

歯車製図の描き方
 

歯車製図では、歯を全部描く必要はありません。
歯先円…正面図、側面図とも太い実線
ピッチ円…細い一点鎖線
歯底円…細い実線( 省略も可)
断面図で図示するときは、歯底の線を太い実線で表します。

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図の中には、主に歯車の歯切り加工以外の加工寸法を記入します。歯切り加工の項目は、[要目表]と呼ばれる表の中に記入します。下図の下の表が要目表です。

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•組立図での歯車の図示方法

かみ合う一対の平歯車を図示する場合、かみ合い部の歯先円はいずれも太い実線で表します。ただし、正面図を左図のように断面で表す場合、一方の歯先円を示す線は、細い破線、または太い破線で表します。

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一連の歯車としてかみ合わされている場合は、お互いの軸間距離などを図示するのが目的ですから、下図のように省略して描いても差しつかえありません。つまり、正面図では歯先とピッチ円だけを描けばよいのです。かみ合い部は、一本の太い実線で表します。軸間距離も実際のとおりに描くと解りにくくなるので、図のように描きます。軸間距離が側面図と一致していないことを確認してください。

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