次の主張の真偽を判定しなさい。
一般に, 行列 $A$ が対称行列ならば, 全ての自然数 $n$ に対し $A^n$ も対称行列である。
正しい。
正しくない。
$A$ が対称行列であれば ${}^tA =A$ であるので, $n$ を自然数とすると
$\begin{eqnarray*} {}^t(A^n) & = & {}^t(AA\cdots A)\\[1em] & = & ({}^tA)({}^tA)\cdots ({}^tA)\\[1em] & = & AA\cdots A= A^n \end{eqnarray*}$
より $A^n$ も対称行列である。
次の主張の真偽を判定しなさい。
一般に, 行列 $A$ が交代行列ならば, 全ての自然数 $n$ に対し $A^n$ も交代行列である。
正しくない。
正しい。
$A = \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ -1 & 0 \end{pmatrix}$
とすると
${}^t A= \begin{pmatrix} 0 & -1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix} = -A$
より $A$ は交代行列である。しかし
$\begin{eqnarray*}A^2 & = & \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ -1 & 0 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 0 & 1 \\ -1 & 0 \end{pmatrix}\\[1em] & = & \begin{pmatrix} -1 & 0 \\ 0 & -1 \end{pmatrix} \end{eqnarray*}$
であり, これは交代行列ではない。
よって主張は正しくない。
次の主張の真偽を判定しなさい。
一般に, $n$ 次正方行列 $A$, $B$ がともに対称行列ならば, $AB$ も対称行列である。
正しくない。
正しい。
$A = \begin{pmatrix} 1 & 1 & 1 \\ 1 & 0 & 0 \\ 1 & 0 & 0 \end{pmatrix}$
$B = \begin{pmatrix} 0 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 1 \\ 0 & 1 & 1 \end{pmatrix}$
とすると $A$, $B$ はともに対称行列であるが
$AB = \begin{pmatrix} 0 & 2 & 2 \\ 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 \end{pmatrix}$
であり, これは対称行列ではない。
次の主張の真偽を判定しなさい。
一般に, $n$ 次正方行列 $A$ に対し $A + {}^tA$ は対称行列である。
正しい。
正しくない。
$A$ が $n$ 次正方行列の時
$\begin{eqnarray*} {}^t(A + {}^tA) & = & {}^tA + {}^t({}^tA)\\[1em] & = & {}^tA +A\\[1em] & = &A + {}^tA \end{eqnarray*}$
よって $A+ {}^tA$ は対称行列である。
次の主張の真偽を判定しなさい。
一般に, $n$ 次正方行列 $A$ に対し $A - {}^tA$ は交代行列である。
正しい。
正しくない。
$A$ が $n$ 次正方行列の時
$\begin{eqnarray*} {}^t(A - {}^tA) & = & {}^tA - {}^t({}^tA)\\[1em] & = & {}^tA - A\\[1em] & = & - (A - {}^tA) \end{eqnarray*}$
よって $A- {}^tA$ は交代行列である。
次の主張の真偽を判定しなさい。
一般に, $n$ 次正方行列 $A$ に対し $A - {}^tA$ は対称行列である。
正しくない。
正しい。
$A = \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 0 & 0 \end{pmatrix}$
とすると
${}^tA = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 1 & 0 \end{pmatrix}$
より
$A - {}^tA = \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ -1 & 0 \end{pmatrix}$
これは対称行列でない。
よって主張は正しくない。
次の主張の真偽を判定しなさい。
一般に, $n$ 次正方行列 $A$, $B$ に対し $A$ が対称行列ならば ${}^tBAB$ は対称行列である。
正しい。
正しくない。
一般に
${}^t(ABC) = {}^tC~{}^tB~{}^tA$
が成り立つので, $A$ が対称行列の時
${}^t ({}^tBAB) = {}^tB ~{}^t\!A ~{}^t({}^tB) = {}^tBAB$
よって ${}^tBAB$ は対称行列である。
次の主張の真偽を判定しなさい。
一般に, $n$ 次正方行列 $A$, $B$ に対し $A$ が交代行列ならば ${}^tBAB$ は交代行列である。
正しい。
正しくない。
一般に
${}^t(ABC) = {}^tC~{}^tB~{}^tA$
が成り立つので, $A$ が交代行列の時
${}^t ({}^tBAB) = {}^tB ~{}^t\!A ~{}^t({}^tB) = {}^tB(-A)B=- ({}^tBAB)$
よって ${}^tBAB$ は交代行列である。