3-5 幾何公差 premium 視聴履歴 前の動画 次の動画 幾何公差とは 幾何公差とは、設計の際に意図された寸法(設計値)に対して、どの程度の誤差を許容できるかという範囲を示すものです。設計の際は、設計値からどの程度のズレなら製品として成り立つのかを明確にしておく必要があります。その上で幾何公差を決定しなければなりません。逆に製品の製造上、寸法が幾何公差に収まらないという場合があります。その場合は、製品設計そのものを見直すことも必要になります。 • 幾何公差の概要 指示された寸法通りに製品を仕上げることは、寸法公差で説明したように事実上不可能です。それと同じように、一見正確に見える立方体を仕上げたつもりでも、拡大して見てみると、垂直であるはずの外形線が斜めになっていたり、曲がっていたりします。これは面に対しても言えることで、実際には曲がっていたりでこぼこしてしまっていたりします。「幾何学的に正確な形体」を加工するのは不可能と言えます。 • 幾何学的に正確な形体とは 設計上で寸法や傾きなどをきっちり指定して物体を加工しても、実際には指定通り正確に作ることは不可能です。つまり「幾何学的に正確な形体」というのは、簡単に言うと“設計上での正確な形体・理想的な形体の姿”ということになり、「幾何公差」とは「幾何学的に正確な形体からの誤差に対する許容範囲」ということになります。 幾何公差の種類 幾何公差を指示する方法は、大きく分けると4 種類あります。「形状公差、姿勢公差、位置公差、振れ公差」この各公差から指示する特性によって、さらに細かく分けられています。ここでは大分類の4種類の幾何公差について、例をあげて簡単に紹介します。 ・形状公差 直線は歪みのないまっすぐな線、平面は凸凹のない平らな面、など、幾何学的に正確な形体からの誤差に対する許容範囲。 《例》「平面度公差」 これは理論的に正確な2つの平行平面の間から、対象となる形体がはみ出していなければ、基準を満たす平面とみなします。 ※平行平面の間の範囲が、いわゆる「公差域」 ・姿勢公差 2つの物体に関係する角度や向きなどの誤差に対する許容範囲。 《例》「平行度公差」 これは基準となる形体に対して、理論的に正確な平行平面の間から、対象となる形体がはみ出していなければ基準を満たす平行とみなします。 • 位置公差 幾何学的に正確な位置からの誤差に対する許容範囲。 《例》「同軸度公差」 これは基準となる軸線A に対して軸線Bも同軸となる場合、理論的に正確な範囲から軸線Bがはみ出していなければ、基準を満たす同軸とみなします。 ・振れ公差 円筒切断面を回転させると、凸凹の高いところと低いところの差が現れます。その誤差を「振れ」といい、振れの最大値と最小値の差を「振れ幅」という。振れ公差というのは、この「振れ」に対する公差。 《例》「円周振れ」 これは基準となる軸から直角に作成した横断面上に公差域を設定し、その範囲から横断面上の円周がはみ出していなければ基準を満たす円周とみなします。公差域は基準となる軸を中心に作成した、半径が公差値だけ離れた2つの円の間になる。 • 幾何公差の種類と記号・定義 形状公差のように形体そのものに公差を設定できるものを「単独形体」といい、公差を設定するために何か基準が必要となるものを「関連形体」という。 データム • データムとは 「データム」とは、「形体の姿勢偏差、位置偏差、振れなどを決めるために設定した理論的に正確な幾何学的基準」と定義されています。つまり、加工や寸法測定をする際に「この面または線を基準に加工・測定しなさい」という基準を表します。「設計」「加工」「計測」の共通の情報が「図面」です。この3者についての作業性および機能を考慮した共通基準として満足できる部分をデータムとして設定することが理想的です。そして、図面の中でデータムは基準を表すための記号として用いられます。 • いろいろなデータム データムにはいろいろとありますが、基準が点、直線、軸直線、平面及び中心平面の場合には、それぞれ「データム点」、「データム直線」、「データム軸直線」、「データム平面」及び「データム中心平面」と呼びます。 つまり平行度公差の場合で言えば、データム平面に対して理論的に正確な平行平面の間から、対象となる形体がはみ出していなければ、基準を満たす平行とみなす、ということになります。 • データムの決め方 データムは「理論的に正確な幾何学的基準」ではありますが、実際の製品における直線は曲がっていたり、平面はねじれていたりするので、正確な基準を決められなのではないか?という疑問が生じるはずです。実際、機械加工では、加工時に工作機械のテーブルに押し当てる面など、使用や加工の基準になる面をデータムにしますが、多少の凸凹やねじれがあるので、やはり理想的な基準面とはいえません。 そこでこの面に定盤や軸受、マンドレルなど十分に精密な形状をもつと規定されたものを接触させて、データムを設定します。つまり「より精密な基準に置き換えて測定をする」ということになります。そして、このように測定対象物側のデータムに指定した接触面を「データム形体」といい、定盤や軸受、マンドレルなど代替基準側の接触面を「実用データム形体」といいます。 幾何公差の指示方法 • 幾何公差やデータムを図面に指示する方法 ○ 公差記入枠 幾何公差の指示は、「公差記入枠」に必要な事柄を記入します。左側に指示する特性によって決められた記号、幾何特性記号を記入し、右側に公差値を記入するのが基本です。この例では公差値0.1の真直度公差を指示しています。 公差にデータムが指定されている場合には、公差値を記入した右側にデータムを指示する枠を増やして文字記号を記入します。 • 図面への指示 実際に図面に記入する場合、公差記入枠の右側、又は左側から引き出した指示線によって形体と結び付けます。これを「公差付き形体指示」といい、指示された形体を「公差付き形体」といいます。 外形線、又は物体表面自身に公差を指示する場合には、形体の外形線上、又は寸法補助線に指示線を垂直にあてて示します。この場合に寸法線と対向させないように注意してください。 もし指示線を寸法線と対向させた場合、それは物体表面ではなく、軸線又は中心平面に公差を指示するという意味になります。つまり指示線の矢印と寸法線が対向しているか、いないかで、指示される形体が変わるということです。 以上の方法が成り立たない場合は、面を示す引き出し線を用いて指示する方法もあります。 特定部分だけに指示したい場合は、太い一点鎖線で指定します。 • データムの指示方法 データムを指示する場合は、データムの指示記号を用います。データム記号を表す三角記号には白抜きと 黒塗りの2種類がありますが、どちらを使用しても構いません。ただし同一図面上では2つを混同しないようにしてください。 データム記号の向きにかかわらず、アルファベットは必ず図面の見る向きに合わせます。これは切断線や矢示法にも共通していえることで、製図の作法上、寸法線と併記して表すはめあい公差記号や、ねじの種類やその等級を表すアルファベットなどを除いて、図面の理解を深めるために記号として用いるアルファベットは必ず図面の見る向きに合わせます。 • データムの指示例 データムの指示方法は公差付き形体の指示方法と同じになります。 コメント 製作図 3-1 寸法の表示 3-1 練習問題 その1… 3-2 表面性状の指示 3-2 練習問題 その2… 3-3 寸法公差 3-4 はめあい 3-4 練習問題 その3… 3-5 幾何公差 3-6 図面の書式
幾何公差とは
幾何公差とは、設計の際に意図された寸法(設計値)に対して、どの程度の誤差を許容できるかという範囲を示すものです。設計の際は、設計値からどの程度のズレなら製品として成り立つのかを明確にしておく必要があります。その上で幾何公差を決定しなければなりません。逆に製品の製造上、寸法が幾何公差に収まらないという場合があります。その場合は、製品設計そのものを見直すことも必要になります。
• 幾何公差の概要
指示された寸法通りに製品を仕上げることは、寸法公差で説明したように事実上不可能です。それと同じように、一見正確に見える立方体を仕上げたつもりでも、拡大して見てみると、垂直であるはずの外形線が斜めになっていたり、曲がっていたりします。これは面に対しても言えることで、実際には曲がっていたりでこぼこしてしまっていたりします。「幾何学的に正確な形体」を加工するのは不可能と言えます。
• 幾何学的に正確な形体とは
設計上で寸法や傾きなどをきっちり指定して物体を加工しても、実際には指定通り正確に作ることは不可能です。つまり「幾何学的に正確な形体」というのは、簡単に言うと“設計上での正確な形体・理想的な形体の姿”ということになり、「幾何公差」とは「幾何学的に正確な形体からの誤差に対する許容範囲」ということになります。
幾何公差の種類
幾何公差を指示する方法は、大きく分けると4 種類あります。「形状公差、姿勢公差、位置公差、振れ公差」この各公差から指示する特性によって、さらに細かく分けられています。ここでは大分類の4種類の幾何公差について、例をあげて簡単に紹介します。
・形状公差
直線は歪みのないまっすぐな線、平面は凸凹のない平らな面、など、幾何学的に正確な形体からの誤差に対する許容範囲。
《例》「平面度公差」
これは理論的に正確な2つの平行平面の間から、対象となる形体がはみ出していなければ、基準を満たす平面とみなします。
※平行平面の間の範囲が、いわゆる「公差域」
・姿勢公差
2つの物体に関係する角度や向きなどの誤差に対する許容範囲。
《例》「平行度公差」
これは基準となる形体に対して、理論的に正確な平行平面の間から、対象となる形体がはみ出していなければ基準を満たす平行とみなします。
• 位置公差
幾何学的に正確な位置からの誤差に対する許容範囲。
《例》「同軸度公差」
これは基準となる軸線A に対して軸線Bも同軸となる場合、理論的に正確な範囲から軸線Bがはみ出していなければ、基準を満たす同軸とみなします。
・振れ公差
円筒切断面を回転させると、凸凹の高いところと低いところの差が現れます。その誤差を「振れ」といい、振れの最大値と最小値の差を「振れ幅」という。振れ公差というのは、この「振れ」に対する公差。
《例》「円周振れ」
これは基準となる軸から直角に作成した横断面上に公差域を設定し、その範囲から横断面上の円周がはみ出していなければ基準を満たす円周とみなします。公差域は基準となる軸を中心に作成した、半径が公差値だけ離れた2つの円の間になる。
• 幾何公差の種類と記号・定義
形状公差のように形体そのものに公差を設定できるものを「単独形体」といい、公差を設定するために何か基準が必要となるものを「関連形体」という。
データム
• データムとは
「データム」とは、「形体の姿勢偏差、位置偏差、振れなどを決めるために設定した理論的に正確な幾何学的基準」と定義されています。つまり、加工や寸法測定をする際に「この面または線を基準に加工・測定しなさい」という基準を表します。「設計」「加工」「計測」の共通の情報が「図面」です。この3者についての作業性および機能を考慮した共通基準として満足できる部分をデータムとして設定することが理想的です。そして、図面の中でデータムは基準を表すための記号として用いられます。
• いろいろなデータム
データムにはいろいろとありますが、基準が点、直線、軸直線、平面及び中心平面の場合には、それぞれ「データム点」、「データム直線」、「データム軸直線」、「データム平面」及び「データム中心平面」と呼びます。
つまり平行度公差の場合で言えば、データム平面に対して理論的に正確な平行平面の間から、対象となる形体がはみ出していなければ、基準を満たす平行とみなす、ということになります。
• データムの決め方
データムは「理論的に正確な幾何学的基準」ではありますが、実際の製品における直線は曲がっていたり、平面はねじれていたりするので、正確な基準を決められなのではないか?という疑問が生じるはずです。実際、機械加工では、加工時に工作機械のテーブルに押し当てる面など、使用や加工の基準になる面をデータムにしますが、多少の凸凹やねじれがあるので、やはり理想的な基準面とはいえません。
そこでこの面に定盤や軸受、マンドレルなど十分に精密な形状をもつと規定されたものを接触させて、データムを設定します。つまり「より精密な基準に置き換えて測定をする」ということになります。そして、このように測定対象物側のデータムに指定した接触面を「データム形体」といい、定盤や軸受、マンドレルなど代替基準側の接触面を「実用データム形体」といいます。
幾何公差の指示方法
• 幾何公差やデータムを図面に指示する方法
○ 公差記入枠
幾何公差の指示は、「公差記入枠」に必要な事柄を記入します。左側に指示する特性によって決められた記号、幾何特性記号を記入し、右側に公差値を記入するのが基本です。この例では公差値0.1の真直度公差を指示しています。
公差にデータムが指定されている場合には、公差値を記入した右側にデータムを指示する枠を増やして文字記号を記入します。
• 図面への指示
実際に図面に記入する場合、公差記入枠の右側、又は左側から引き出した指示線によって形体と結び付けます。これを「公差付き形体指示」といい、指示された形体を「公差付き形体」といいます。
外形線、又は物体表面自身に公差を指示する場合には、形体の外形線上、又は寸法補助線に指示線を垂直にあてて示します。この場合に寸法線と対向させないように注意してください。
もし指示線を寸法線と対向させた場合、それは物体表面ではなく、軸線又は中心平面に公差を指示するという意味になります。つまり指示線の矢印と寸法線が対向しているか、いないかで、指示される形体が変わるということです。
以上の方法が成り立たない場合は、面を示す引き出し線を用いて指示する方法もあります。
特定部分だけに指示したい場合は、太い一点鎖線で指定します。
• データムの指示方法
データムを指示する場合は、データムの指示記号を用います。データム記号を表す三角記号には白抜きと
黒塗りの2種類がありますが、どちらを使用しても構いません。ただし同一図面上では2つを混同しないようにしてください。
データム記号の向きにかかわらず、アルファベットは必ず図面の見る向きに合わせます。これは切断線や矢示法にも共通していえることで、製図の作法上、寸法線と併記して表すはめあい公差記号や、ねじの種類やその等級を表すアルファベットなどを除いて、図面の理解を深めるために記号として用いるアルファベットは必ず図面の見る向きに合わせます。
• データムの指示例
データムの指示方法は公差付き形体の指示方法と同じになります。
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