3-2 表面性状の指示 premium 視聴履歴 前の動画 次の動画 表面性状の概要 「表面性状」とは、仕上げ面に起こる凸凹の度合いと考えることができます。これが小さければ“つるつる”、大きければ“ざらざら”しているということです。機械部品の表面の状態には、主として次のようなものがあります。 表面の粗さ……切削加工や研削加工などの際に生じる細かい凸凹のこと 表面のうねり……表面の粗さより大きい間隔で起こる面の起伏をいう 筋目方向……表面の切削加工によって生じる節目の方向をいう 除去加工の要否……部品などの表面を機械加工などにより除去するかしないかをいう JISではこれらを総称して「表面性状」といっています。表面性状は機械の機能に影響があるので、製作図には明確に指示する必要があります。 「表面性状」のパラメータには次のようなものが規定されています。 記号に使われている「R」は「Roughness」の略です。 上記のうち、「算術平均粗さ」は国際的に広く採用されており、JISでも使用されています。かつては「中心線平均あらさ」という名称で呼ばれていました。昔よく使われていた「十点平均あらさ」は、原国際規約からは削除され、記号もかつての「Rz」から「RzJIS」となり、あまり使われなくなる傾向にあります。そして「Rz」という記号は、かつて「Ry」という記号で表していた「最大高さ」を表す記号にとって替わられています。 表面粗さパラメータの種類 表面粗さパラメータの種類及びそれらの記号は、次のとおりです。 • (1) 算術平均粗さRa Raは、定義が断面曲線から粗さ曲線に変更となったので、中心線平均粗さから算術平均粗さに変更となりました。このRaの定義は、次のとおりです。 下図は、基準長さとしたときに、粗さ曲線Z(x)について、0~間を積分したときの、高さ方向の値を μ mで表したものです。 • (2) 最大高さ粗さRz 最大高さ粗さは、基準高さにおける輪郭曲線の山高さZpの最大値と谷深さZvの最大値との和です。 • (3) 輪郭曲線要素の平均長さRSm 輪郭曲線要素の平均長さは、基準長さにおける輪郭曲線要素の長さXs の平均値です。 • (4) 輪郭曲線の負荷長さ率(アボットの負荷曲線)tp 輪郭曲線の負荷長さは、切断レベルcの関数として表された輪郭曲線の負荷長さを%で表した百分率です。また、tpは切断レベルcをμmで表してもかまいません。 • 表面性状の図示記号 ○ 基本図示記号 基本図示記号は図のように対象面を示す線に対して約60°傾いた、長さの異なる2本の直線で構成します。 ○ 除去加工の図示記号 除去加工、例えば対象面に機械加工する場合には、下図のように基本図示記号に横線を付けます。 除去加工をしない( あるいは、許さない) 場合は、下図のように基本図示記号に丸記号を付けます。 ただし、これらの表面性状の図示記号だけでは、表面性状の要求事項の指示にはなりません。これらの図示記号を使って表面性状の要求事項を指示する場合、図のように基本の図示記号の長い方の斜線に直線を付けます。 ○ “部品一周の全周面”の表面性状の図示記号 図面に閉じた外形線によって表された部品一周の全周面に、同じ表面性状が要求される場合には図のように表面性状の図示記号に丸記号を付けます。 ○ 表面性状の要求事項の指示位置 表面性状の図示記号における表面性状の要求事項の指示位置は図のようになります。a ~ b に入る各々の図示記号については後述の表を参照してください。 ※ 1:16%ルール 要求値が,パラメータの上限値によって指示されている場合には,一つの評価長さから切り取った全部の基準長さを用いて算出したパラメータの測定値のうち,図面又は製品技術情報に指示された要求を超える数が16%以下であれば,この表面は要求値を満たすものとして受け入れられるものとする。 ※ 2:最大値ルール 要求値が,パラメータの最大値によって指示されている場合,対象面全域で求めたパラメータの値のうち一つでも図面又は製品技術情報に指示された要求値を超えてはならない。 パラメータの最大許容値を指示するためには,パラメータの記号に“max”を付ける(例えば,Rz 1max)。 図記号・表面性状の要求事項の指示 •(1) 表面性状の図示記号 表面性状の要求事項の付いた図記号が、図面の下辺または右辺から読めるように指示します。 •(2) 外形線、または引出線・参照線に指示する場合 図示記号は、外形線に接するか、対象面から引き出された引出線に接するように記入します。 また、同一の図式号を近接した二箇所に指示する場合は、下図のように矢印を分岐して記入します。 <引出線の2つの使い方> 一般ルールとして、図示記号または矢印( あるいは他の端末記号) 付きの引出線は、部品の実体の外側から ( 表面を表す) 外形線または外形線の延長線に接するように指示します。 •(3) 寸法線に指示する場合 間違った解釈がされる恐れがない場合には、表面性状の要求事項は下図のように寸法に並べて指示してもかまいません。 ( ※図の対象面は、明らかに円筒面であることがわかるのでOK です。円筒面以外、たとえば立方体だとすると、設計者の意図は下面の指示だとしても、製作者は手前面のことだと解釈するかもしれません) •(4) 寸法補助線に指示する場合 表面性状の要求事項は(2) や<引出線の2つの使い方>の図のように寸法補助線に接するか、寸法補助線に矢印で接する引出線につながった参照線、または引出補助線が適用できない場合には引出線に接するように指示します。 •(5) 円筒表面及び角柱表面に指示する場合 中心線によって表された円筒表面及び角柱表面(角柱の各表面が同じ表面性状である場合)では表面性状の要求事項を1 回だけ指示します(下図左)。 角柱の各表面に異なった表面性状が要求される場合には、下図右のように角柱の各表面に対して個々に指示します。 •(6) 表面性状の要求事項の簡略図示 ○ 大部分の表面が同じ表面性状の要求事項をもつ場合 部品の大部分に同じ表面性状が要求される場合には、表面性状の要求事項があることを示すために、次のようにします。 ( ) で囲んだ何も付けてない基本図示記号 ( ) で囲んだ部分的に異なった表面性状の要求事項は、該当する表面の主投影図に指示します。 ○ 繰返し指示または限られたスペースに対応する参照指示 文字付き図示記号の場合は、対象部品の傍ら、表題欄の傍ら、または一般事項を指示するスペースに簡略参照指示であることを示すことによって、簡略図示を対象面に適用してもよい。 図示記号だけによる場合は、同じ表面性状の要求事項が部品の大部分で用いられる場合、下図のように図面に参照指示であることを示すことによって、基本的な表面性状の図示記号を対象面に適用してもよい(3.2 表面性状の図示記号参照)。 「加工法を問わない」 「除去加工をする」 「除去加工をしない」場合の表面性状の簡略図示 ○ (7) 表面処理前後の表面性状の指示 表面処理の前後の表面性状を指示する必要がある場合の指示は" 注記" または図のような指示を行います。 コメント 製作図 3-1 寸法の表示… 3-1… 3-2 表面性状の指示… 3-2… 3-3 寸法公差… 3-4 はめあい… 3-4… 3-5 幾何公差… 3-6 図面の書式…
表面性状の概要
「表面性状」とは、仕上げ面に起こる凸凹の度合いと考えることができます。これが小さければ“つるつる”、大きければ“ざらざら”しているということです。機械部品の表面の状態には、主として次のようなものがあります。
JISではこれらを総称して「表面性状」といっています。表面性状は機械の機能に影響があるので、製作図には明確に指示する必要があります。
「表面性状」のパラメータには次のようなものが規定されています。
記号に使われている「R」は「Roughness」の略です。
上記のうち、「算術平均粗さ」は国際的に広く採用されており、JISでも使用されています。かつては「中心線平均あらさ」という名称で呼ばれていました。昔よく使われていた「十点平均あらさ」は、原国際規約からは削除され、記号もかつての「Rz」から「RzJIS」となり、あまり使われなくなる傾向にあります。そして「Rz」という記号は、かつて「Ry」という記号で表していた「最大高さ」を表す記号にとって替わられています。
表面粗さパラメータの種類
表面粗さパラメータの種類及びそれらの記号は、次のとおりです。
• (1) 算術平均粗さRa
Raは、定義が断面曲線から粗さ曲線に変更となったので、中心線平均粗さから算術平均粗さに変更となりました。このRaの定義は、次のとおりです。
下図は、基準長さとしたときに、粗さ曲線Z(x)について、0~間を積分したときの、高さ方向の値を
μ mで表したものです。
• (2) 最大高さ粗さRz
最大高さ粗さは、基準高さにおける輪郭曲線の山高さZpの最大値と谷深さZvの最大値との和です。
• (3) 輪郭曲線要素の平均長さRSm
輪郭曲線要素の平均長さは、基準長さにおける輪郭曲線要素の長さXs の平均値です。
• (4) 輪郭曲線の負荷長さ率(アボットの負荷曲線)tp
輪郭曲線の負荷長さは、切断レベルcの関数として表された輪郭曲線の負荷長さを%で表した百分率です。また、tpは切断レベルcをμmで表してもかまいません。
• 表面性状の図示記号
○ 基本図示記号
基本図示記号は図のように対象面を示す線に対して約60°傾いた、長さの異なる2本の直線で構成します。
○ 除去加工の図示記号
除去加工、例えば対象面に機械加工する場合には、下図のように基本図示記号に横線を付けます。
除去加工をしない( あるいは、許さない) 場合は、下図のように基本図示記号に丸記号を付けます。
ただし、これらの表面性状の図示記号だけでは、表面性状の要求事項の指示にはなりません。これらの図示記号を使って表面性状の要求事項を指示する場合、図のように基本の図示記号の長い方の斜線に直線を付けます。
○ “部品一周の全周面”の表面性状の図示記号
図面に閉じた外形線によって表された部品一周の全周面に、同じ表面性状が要求される場合には図のように表面性状の図示記号に丸記号を付けます。
○ 表面性状の要求事項の指示位置
表面性状の図示記号における表面性状の要求事項の指示位置は図のようになります。a ~ b に入る各々の図示記号については後述の表を参照してください。
※ 1:16%ルール
要求値が,パラメータの上限値によって指示されている場合には,一つの評価長さから切り取った全部の基準長さを用いて算出したパラメータの測定値のうち,図面又は製品技術情報に指示された要求を超える数が16%以下であれば,この表面は要求値を満たすものとして受け入れられるものとする。
※ 2:最大値ルール
要求値が,パラメータの最大値によって指示されている場合,対象面全域で求めたパラメータの値のうち一つでも図面又は製品技術情報に指示された要求値を超えてはならない。
パラメータの最大許容値を指示するためには,パラメータの記号に“max”を付ける(例えば,Rz 1max)。
図記号・表面性状の要求事項の指示
•(1) 表面性状の図示記号
表面性状の要求事項の付いた図記号が、図面の下辺または右辺から読めるように指示します。
•(2) 外形線、または引出線・参照線に指示する場合
図示記号は、外形線に接するか、対象面から引き出された引出線に接するように記入します。
また、同一の図式号を近接した二箇所に指示する場合は、下図のように矢印を分岐して記入します。
<引出線の2つの使い方>
一般ルールとして、図示記号または矢印( あるいは他の端末記号) 付きの引出線は、部品の実体の外側から
( 表面を表す) 外形線または外形線の延長線に接するように指示します。
•(3) 寸法線に指示する場合
間違った解釈がされる恐れがない場合には、表面性状の要求事項は下図のように寸法に並べて指示してもかまいません。
( ※図の対象面は、明らかに円筒面であることがわかるのでOK です。円筒面以外、たとえば立方体だとすると、設計者の意図は下面の指示だとしても、製作者は手前面のことだと解釈するかもしれません)
•(4) 寸法補助線に指示する場合
表面性状の要求事項は(2) や<引出線の2つの使い方>の図のように寸法補助線に接するか、寸法補助線に矢印で接する引出線につながった参照線、または引出補助線が適用できない場合には引出線に接するように指示します。
•(5) 円筒表面及び角柱表面に指示する場合
中心線によって表された円筒表面及び角柱表面(角柱の各表面が同じ表面性状である場合)では表面性状の要求事項を1 回だけ指示します(下図左)。
角柱の各表面に異なった表面性状が要求される場合には、下図右のように角柱の各表面に対して個々に指示します。
•(6) 表面性状の要求事項の簡略図示
○ 大部分の表面が同じ表面性状の要求事項をもつ場合
部品の大部分に同じ表面性状が要求される場合には、表面性状の要求事項があることを示すために、次のようにします。
( ) で囲んだ何も付けてない基本図示記号
( ) で囲んだ部分的に異なった表面性状の要求事項は、該当する表面の主投影図に指示します。
○ 繰返し指示または限られたスペースに対応する参照指示
文字付き図示記号の場合は、対象部品の傍ら、表題欄の傍ら、または一般事項を指示するスペースに簡略参照指示であることを示すことによって、簡略図示を対象面に適用してもよい。
図示記号だけによる場合は、同じ表面性状の要求事項が部品の大部分で用いられる場合、下図のように図面に参照指示であることを示すことによって、基本的な表面性状の図示記号を対象面に適用してもよい(3.2 表面性状の図示記号参照)。
「加工法を問わない」
「除去加工をする」
「除去加工をしない」場合の表面性状の簡略図示
○ (7) 表面処理前後の表面性状の指示
表面処理の前後の表面性状を指示する必要がある場合の指示は" 注記" または図のような指示を行います。
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