逆変換と合成変換 例題集

$Q1$.
線形変換 $f:(x,y)\mapsto (5x+3y,-2x-y)$ の逆変換を求めなさい。

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$f^{-1}:(x,y) \mapsto (-x-3y,2x+5y)$

線形変換 $f$ を表す行列が $A$ である時, $A^{-1}$ で表される線形変換を $f$ の逆変換といいます。

線形変換 $f$ を行列を用いて表すと

$\begin{pmatrix} 5x+3y \\ -2x-y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 5 & 3 \\ -2 & -1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$

$\begin{pmatrix} 5 & 3 \\ -2 & -1 \end{pmatrix}$ の逆行列は

$\begin{pmatrix} 5 & 3 \\ -2 & -1 \end{pmatrix}^{-1} = \begin{pmatrix} -1 & -3 \\ 2 & 5 \end{pmatrix}$

となるので

$\begin{pmatrix} -1 & -3 \\ 2 & 5 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -x-3y \\ 2x+5y \end{pmatrix}$

よって $f$ の逆変換は $f^{-1}:(x,y) \mapsto (-x-3y,2x+5y)$ となります。

$Q2$.
行列 $\begin{pmatrix} 7 & 3 \\ -5 & -2 \end{pmatrix}$ で表される線形変換 $f$ によって点 ${\rm A}$ が点 ${\rm B}(3,2)$ に移されるとき, ${\rm A}$ の座標を求めなさい。

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${\rm A}(-12,29)$

$f({\rm A}) = {\rm B}$ である時, $f^{-1}({\rm B}) = {\rm A}$ となります。

$f$ の逆変換 $f^{-1}$ を表す行列は

$\begin{pmatrix} 7 & 3 \\ -5 & -2 \end{pmatrix}^{-1} = \begin{pmatrix} -2 & -3 \\ 5 & 7 \end{pmatrix}$

であるから ${\rm A}$ の座標は

$\begin{pmatrix} -2 & -3 \\ 5 & 7 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 3 \\ 2 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -12 \\ 29 \end{pmatrix}$

となります。

$Q3$.
$2$ つの線形変換 $f:(x,y) \mapsto (2x-3y,-x+y)$ と $g:(x,y) = (-3x-2y,-8x-5y)$ に対し, その合成変換 $f \circ g$ と $g\circ f$ をそれぞれ求めなさい。

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$f\circ g :(x,y) \mapsto (18x+11y, -5x-3y)$
$g \circ f :(x,y) \mapsto (-8x+7y,-11x+19y)$

$f$ を表す行列を $A$ とすると

$\begin{pmatrix} 2x-3y \\ -x+y\end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 2 & -3 \\ -1 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$

より $A = \begin{pmatrix} 2 & -3 \\ -1 & 1 \end{pmatrix}$ となります。

また, $g$ を表す行列を $B$ とすると

$\begin{pmatrix} -3x-2y \\ -8x-5y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -3 & -2 \\ -8 & -5 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$

より $B = \begin{pmatrix} -3 & -2 \\ -8 & -5 \end{pmatrix}$ となります。

$f\circ g$ を表す行列は $AB$ であるから

$AB = \begin{pmatrix} 2 & -3 \\ -1 & 1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} -3 & -2 \\ -8 & -5 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 18 & 11 \\ -5 & -3 \end{pmatrix}$

より $f\circ g :(x,y) \mapsto (18x+11y, -5x-3y)$ となります。

また $g \circ f$ を表す行列は $BA$ であるから

$BA = \begin{pmatrix} -3 & -2 \\ -8 & -5 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 2 & -3 \\ -1 & 1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -4 & 7 \\ -11 & 19 \end{pmatrix}$

より $g \circ f :(x,y) \mapsto (-4x+7y,-11x+19y)$ となります。

※注意

このように, 一般には $f \circ g$ と $g \circ f$ は異なる変換となります。 合成変換を考えるときは $f$ と $g$ を書く順番に注意しましょう。

$Q4$.
線形変換 $f$ の逆変換が存在する時, $f$ と $f^{-1}$ の合成変換 $f^{-1}\circ f$ は恒等変換であることを証明しなさい。

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$f$ を表す行列を $A$ とすると, $A$ は正則であり, $f^{-1}$ を表す行列は $A^{-1}$ である。

合成変換 $f^{-1}\circ f$ を表す行列を計算すると

$A^{-1}A= E$

$f^{-1}\circ f$ を表す行列が単位行列なので, $f^{-1}\circ f$ は恒等変換である。

$Q5$.
$2$ つの線形変換 $f$, $g$ の合成変換 $g \circ f$ の逆変換が存在する時, $f$ と $g$ にも逆変換が存在することを証明しなさい。

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$f$ を表す行列を $A$, $g$ を表す行列を $B$ とすると, $g \circ f$ を表す行列は $BA$ である。

$g \circ f$ に逆変換が存在することから, $BA$ は正則であるので

$|BA| \not=0$

である。$|BA| = |B||A|$ であるから, 特に

$|A| \not=0$ かつ $|B|\not=0$

すなわち, $A$, $B$ はともに正則であるので, $f$ と $g$ には逆変換が存在する。