行列式の性質 例題集

$Q1$.
次の行列の行列式を計算しなさい。

$(1330120023111221)$
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$-22$

$1$ 行目と $2$ 行目を入れ換えると

$|1330120023111221| =(-1) |1200133023111221|$

$1$ 行目から $(-1)$ をくくり出すと

$(-1) |1200133023111221| =|1200133023111221|$

$2$ 列目から $1$ 列目の $2$ 倍を引くと

$|1200133023111221|=|12200132302341112(2)21|=|1000113027111021|$

転置行列の行列式は変わらないので, 8章の例題 $Q4$ の性質を使うと

$|1000113027111021| = |130711021| = 1 - 2 - 21 = -22$

$Q2$.
次の行列の行列式を計算しなさい。

$(3013231212332122)$
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$20$

$1$ 行目と $3$ 行目を入れ換えると

$|3013231212332122| = - |1233231230132122|$

$1$ 列目の成分が $0$ になるように, 各行から $1$ 行目を引くと

$|1233231230132122|=|12330174068120388|=|1746812388|$

$1$ 行目から $(-1)$ をくくり出すと

$- |1746812388| = |1746812388|$

再び $1$ 列目の成分が $0$ になるように, $2$ 行目と $3$ 行目から $1$ 行目を引くと

$|1746812388|=|174034120134|=|3412134|=136+156=20$

$Q3$.
次の行列の行列式を計算しなさい。

$(1xx21yy21zz2)$
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$(x-y)(y-z)(z-x)$

$2$ 行目と $3$ 行目から $1$ 行目を引くと

$|1xx21yy21zz2|=|1xx20yxy2x20zxz2x2|=|yxy2x2zxz2x2|=(yx)(zx)|1y+x1z+x|=(yx)(zx)((z+x)(y+x))=(yx)(zx)(zy)$

よって整理すると $|1xx21yy21zz2| = (x-y)(y-z)(z-x)$ となります。

【別解】

行列式は $x$ に関する多項式になるので

$f(x) = |1xx21yy21zz2|$

とすると, $f(x)$ の次数は高々 $2$ であることがわかります。

同じ列を含む行列の行列式は $0$ であるから, $x=y$ とすると

$f(y) = |1yy21yy21zz2| = 0$

因数定理より, $f(x)$ は $(x-y)$ を因数に持ちます。

同様に $f(z)=0$ となるので $f(x)$ は $(x-z)$ を因数に持ちます。

$f(x)$ の ($x$ に関する) 次数は $2$ なので

$f(x) = \alpha(x-y)(x-z)$

であり, 行列式において $x^2$ を含む項は

$zx^2 - yx^2 = (z-y)x^2$

であるから, このことから $\alpha = (z-y)$ となります。

よってこの行列の行列式は

$|1xx21yy21zz2| = f(x) = (y-z)(x-y)(x-z)$

となります。

$Q4$.
行列 $A$ が正則である時 $|A|\not=0$ であることを証明しなさい。

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単位行列を $E$ とすると $|E|=1$ であることに注意する。

$A$ の逆行列を $A^{-1}$ とすると

$|A||A^{-1}| = |AA^{-1}| = |E| = 1$

$|A||A^{-1}|\not=0$ より, 特に $|A|\not=0$ である。

よって $A$ が正則ならば $|A|\not=0$ が成り立つ。

$Q5$.
$n$ 次の正方行列 $A$ について以下の問いに答えなさい。

(1) $A$ に行基本変形を施し $B$ に変形した時, $|A|\not=0 \Leftrightarrow |B|\not=0$ であることを証明しなさい。
(2) ${\rm rank}~A=n \Leftrightarrow |A|\not=0$ であることを証明しなさい。
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(1)

5章の例題より, 行基本変形は基本行列を左からかける操作に対応する。

よって, $B$ は $A$ に行基本変形を施したものなので $B$ はある基本行列 $P$ を用いて

$B = PA$

と表せる。

$P$ が基本行列の時, $|P|\not=0$ であることに注意すると

$|B| = |PA| = |P||A|$

$|P|\not=0$ であるから, $|A|\not=0 \Leftrightarrow |B|\not=0$ が成り立つ。

(2)
${\rm rank}~A=n$ の時, $A$ に行基本変形を複数回施すことで, $A$ は次のような上三角行列 $B$ に変形できる。

$B = (1b12b1n1b1n01b2n1b2n001bn1n0001)$

すると $|B|=1\not=0$ であるから, (1) より $|A|\not=0$ が成り立つ。

${\rm rank}~A \lt n$ の時は, $A$ は行基本変形により $0$ だけからなる行を含む行列 $B$ に変形でき, そのような $B$ は

$|B|=0$

となるので, (1) より $|A|=0$ が成り立つ。