$Q1$.
行列 $A = (−1−211)$ の逆行列を計算しなさい。
$Q2$.
行列 $A = (3−4−23)$, $B = (3102)$ に対し, 次を満たす行列 $X$, $Y$ を求めなさい。
行列 $A$ について
$ad-bc = 3\cdot 3-(-4)\cdot (-2)=1$
であるから
$A^{-1} = (3423)$
となります。
(1)
$AX =B$ である時, 両辺に左から $A^{-1}$ をかけると
$A−1(AX)=A−1BEX=A−1BX=A−1B$
よって $X = A^{-1}B$ とすれば
$AX = A(A^{-1}B) =(AA^{-1})B = EB=B$
となることがわかります。計算すると
$X = A^{-1}B =(3423)(3102) = (91168)$
となります。
(2)
(1) と同様に考えて
$Y= BA^{-1}$
とすれば
$YA = (BA^{-1})A =B(A^{-1}A)= BE =B$
となることがわかります。よって
$Y = BA^{-1} = (3102) (3423) = (111546)$
となります。
$Q3$.
行列 $A = (5221)$, $B = (3712)$ に対し, 次の行列を計算しなさい。
(1)
$AB$ を計算すると
$AB = (5221) (3712) = (1739716)$
となるので, その逆行列は
$(AB)^{-1} = \dfrac{1}{17\cdot 16 - 39\cdot 7} (16−39−717) = (−16397−17)$
(2)
$BA$ を計算すると
$BA = (3712) (5221) = (291394)$
となるので, その逆行列は
$(BA)^{-1} = \dfrac{1}{29\cdot 4 - 13\cdot 9} (4−13−929) = (−4139−29)$
(3)
まず $A^{-1}$, $B^{-1}$ を計算すると
$A^{-1}= \dfrac{1}{5 \cdot 1 - 2\cdot 2}(1−2−25) =(1−2−25)$
また
$B^{-1} = \dfrac{1}{3\cdot 2 - 7\cdot 1}(2−7−13) = (−271−3)$
よって
$B^{-1}A^{-1} = (−271−3) (1−2−25) = (−16397−17)$
(4)
$A^{-1}B^{-1} = (1−2−25) (−271−3) = (−4139−29)$
※
この例からもわかるように, 一般に $(AB)^{-1} = B^{-1}A^{-1}$ が成り立ちます。
$Q4$.
ある $n\times n$ 行列 $X$ が, 任意の $n$ 次正方行列 $A$ に対し $XA = AX = A$ となる時, $X$ は単位行列であることを証明しなさい。
$n$ 次単位行列を $E$ と表す。
ある行列 $X$ が, 任意の行列 $A$ に対し $AX = XA =A$ となるとすると, 特に $A=E$ とすれば
$EX = XE = E$
一方 $E$ は単位行列なので $EX=X$ である。よって
$X = EX = E$
以上より $X$ は単位行列である。
このことから,
任意の $A$ に対し $AX=XA=A$
という性質を持つ行列 $X$ は単位行列のみであることがわかります。
$Q5$.
ある行列 $A$ に対し, $2$ つの行列 $X$ と $Y$ が $AX = XA = AY = YA = E$ を満たすとする。この時 $X=Y$ であることを証明しなさい。
仮定から $AX=E$ かつ $YA = E$ が成り立つ。
また, $E$ は単位行列なので $X = EX$ かつ $Y = YE$ であることに注意すると
$X =EX = (YA)X = Y(AX) = YE = Y$
よって $X = Y$ が成り立つ。
このことから, 逆行列は存在すれば唯一つであることがわかります。
$Q6$.
行列 $A$ が正則であるとする。この時 ${}^t\!A$ も正則であり $({}^t\!A)^{-1} = {}^t\!(A^{-1})$ が成り立つことを証明しなさい。
一般に, 行列 $A$, $B$ に対し
${}^t\!(AB) = {}^t\!B{}^t\!A$
が成り立つので
${}^t\!A{}^t\!(A^{-1}) = {}^t\!(A^{-1}A) = {}^t\!E=E$
また
${}^t\!(A^{-1}){}^t\!A = {}^t\!(AA^{-1}) = {}^t\!E=E$
よって ${}^t\!(A^{-1})$ は ${}^t\!A$ の逆行列である。
このことから, 転置行列の逆行列は, 逆行列の転置行列になります。
$Q7$ [応用問題].
複素数 $\alpha = a + bi$ ($i$ は虚数単位) に対し, $2$ 次の正方行列 $A_{\alpha}$ を
$A_{\alpha} = (a−bba)$
と定める。この時, 次が成り立つことを証明しなさい。
(1)
$\alpha=a+bi$ とする。 $\alpha =0$ の時 $A_{\alpha}$ は零行列なので, 正則でない。
よって $A_{\alpha}$ が正則ならば $\alpha\not=0$ である。
逆に $\alpha \not=0$ の時, $a^2 + b^2\not=0$ より逆行列の公式から, $A_{\alpha}$ は逆行列
$A_{\alpha}^{-1} = \dfrac{1}{a^2 + b^2}(ab−ba)$
を持つ。よって主張が成り立つ。
(2)
$\alpha\not=0$ とすると
$\alpha^{-1} = \dfrac{1}{a+bi} = \dfrac{a-bi}{(a+bi)(a-bi)} = \dfrac{a}{a^2+b^2} - \dfrac{bi}{a^2+b^2}$
よって
$A_{\alpha^{-1}} = \dfrac{1}{a^2+b^2}(ab−ba) = A_{\alpha}^{-1} $
である。
行列 $A$ に対し $XA = AX = E$ ($E$ は単位行列) となるような行列 $X$ を $A$ の逆行列といい, $A^{-1}$ と表します。
特に $2\times 2$ 行列 $A =(abcd)$ は $ad -bc\not=0$ の時, 逆行列が存在し,
$A^{-1} = \dfrac{1}{ad-bc}(d−b−ca)$
が成り立ちます。
いま, $A = (−1−211)$ とすると
$ad-bc = -1 -(-2) = 1$
であるから
$A^{-1} = \dfrac{1}{1}(12−1−1) = (12−1−1)$
となります。