逆行列 例題集

$Q1$.
行列 $A = \begin{pmatrix} -1 & -2 \\ 1 & 1 \end{pmatrix}$ の逆行列を計算しなさい。

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$A^{-1} = \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ -1 & -1 \end{pmatrix}$

行列 $A$ に対し $XA = AX = E$ ($E$ は単位行列) となるような行列 $X$ を $A$ の逆行列といい, $A^{-1}$ と表します。

特に $2\times 2$ 行列 $A =\begin{pmatrix} a & b \\c & d \end{pmatrix}$ は $ad -bc\not=0$ の時, 逆行列が存在し,

$A^{-1} = \dfrac{1}{ad-bc}\begin{pmatrix} d & -b \\-c & a \end{pmatrix}$

が成り立ちます。

いま, $A = \begin{pmatrix} -1 & -2 \\ 1 & 1 \end{pmatrix}$ とすると

$ad-bc = -1 -(-2) = 1$

であるから

$A^{-1} = \dfrac{1}{1}\begin{pmatrix} 1 & 2 \\ -1 & -1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ -1 & -1 \end{pmatrix}$

となります。

$Q2$.
行列 $A = \begin{pmatrix} 3 & -4 \\ -2 & 3 \end{pmatrix}$, $B = \begin{pmatrix} 3 & 1 \\ 0 & 2 \end{pmatrix}$ に対し, 次を満たす行列 $X$, $Y$ を求めなさい。

(1) $AX=B$
(2) $YA=B$
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(1) $X = \begin{pmatrix} 9 & 11 \\ 6 & 8 \end{pmatrix}$
(2) $Y = \begin{pmatrix} 11 & 15 \\ 4 & 6 \end{pmatrix}$

行列 $A$ について

$ad-bc = 3\cdot 3-(-4)\cdot (-2)=1$

であるから

$A^{-1} = \begin{pmatrix} 3 & 4 \\ 2 & 3 \end{pmatrix}$

となります。

(1)
$AX =B$ である時, 両辺に左から $A^{-1}$ をかけると

$\begin{aligned} A^{-1}(AX) & = A^{-1}B \\ EX & = A^{-1}B\\ X & = A^{-1}B \end{aligned}$

よって $X = A^{-1}B$ とすれば

$AX = A(A^{-1}B) =(AA^{-1})B = EB=B$

となることがわかります。計算すると

$X = A^{-1}B =\begin{pmatrix} 3 & 4 \\ 2 & 3 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 3 & 1 \\ 0 & 2 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 9 & 11 \\ 6 & 8 \end{pmatrix}$

となります。

(2)
(1) と同様に考えて

$Y= BA^{-1}$

とすれば

$YA = (BA^{-1})A =B(A^{-1}A)= BE =B$

となることがわかります。よって

$Y = BA^{-1} = \begin{pmatrix} 3 & 1 \\ 0 & 2 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 3 & 4 \\ 2 & 3 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 11 & 15 \\ 4 & 6 \end{pmatrix}$

となります。

$Q3$.
行列 $A = \begin{pmatrix} 5 & 2 \\ 2 & 1 \end{pmatrix}$, $B = \begin{pmatrix} 3 & 7 \\ 1 & 2 \end{pmatrix}$ に対し, 次の行列を計算しなさい。

(1) $(AB)^{-1}$
(2) $(BA)^{-1}$
(3) $B^{-1}A^{-1}$
(4) $A^{-1}B^{-1}$
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(1) $(AB)^{-1} = \begin{pmatrix} -16 & 39 \\ 7 & -17 \end{pmatrix}$
(2) $(BA)^{-1} = \begin{pmatrix} -4 & 13 \\ 9 & -29 \end{pmatrix}$
(3) $B^{-1}A^{-1} = \begin{pmatrix} -16 & 39 \\ 7 & -17 \end{pmatrix}$
(4) $A^{-1}B^{-1} = \begin{pmatrix} -4 & 13 \\ 9 & -29 \end{pmatrix}$

(1)
$AB$ を計算すると

$AB = \begin{pmatrix} 5 & 2 \\ 2 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 3 & 7 \\ 1 & 2 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 17 & 39 \\ 7 & 16 \end{pmatrix}$

となるので, その逆行列は

$(AB)^{-1} = \dfrac{1}{17\cdot 16 - 39\cdot 7} \begin{pmatrix} 16 & -39 \\ -7 & 17 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -16 & 39 \\ 7 & -17 \end{pmatrix}$

(2)
$BA$ を計算すると

$BA = \begin{pmatrix} 3 & 7 \\ 1 & 2 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 5 & 2 \\ 2 & 1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 29 & 13 \\ 9 & 4 \end{pmatrix}$

となるので, その逆行列は

$(BA)^{-1} = \dfrac{1}{29\cdot 4 - 13\cdot 9} \begin{pmatrix} 4 & -13 \\ -9 & 29 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -4 & 13 \\ 9 & -29 \end{pmatrix}$

(3)
まず $A^{-1}$, $B^{-1}$ を計算すると

$A^{-1}= \dfrac{1}{5 \cdot 1 - 2\cdot 2}\begin{pmatrix} 1 & -2 \\ -2 & 5 \end{pmatrix} =\begin{pmatrix} 1 & -2 \\ -2 & 5 \end{pmatrix}$

また

$B^{-1} = \dfrac{1}{3\cdot 2 - 7\cdot 1}\begin{pmatrix} 2 & -7 \\ -1 & 3 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -2 & 7 \\ 1 & -3 \end{pmatrix}$

よって

$B^{-1}A^{-1} = \begin{pmatrix} -2 & 7 \\ 1 & -3 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 & -2 \\ -2 & 5 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -16 & 39 \\ 7 & -17 \end{pmatrix}$

(4)

$A^{-1}B^{-1} = \begin{pmatrix} 1 & -2 \\ -2 & 5 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} -2 & 7 \\ 1 & -3 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -4 & 13 \\ 9 & -29 \end{pmatrix}$

この例からもわかるように, 一般に $(AB)^{-1} = B^{-1}A^{-1}$ が成り立ちます。

$Q4$.
ある $n\times n$ 行列 $X$ が, 任意の $n$ 次正方行列 $A$ に対し $XA = AX = A$ となる時, $X$ は単位行列であることを証明しなさい。

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$n$ 次単位行列を $E$ と表す。

ある行列 $X$ が, 任意の行列 $A$ に対し $AX = XA =A$ となるとすると, 特に $A=E$ とすれば

$EX = XE = E$

一方 $E$ は単位行列なので $EX=X$ である。よって

$X = EX = E$

以上より $X$ は単位行列である。

このことから,

任意の $A$ に対し $AX=XA=A$

という性質を持つ行列 $X$ は単位行列のみであることがわかります。

$Q5$.
ある行列 $A$ に対し, $2$ つの行列 $X$ と $Y$ が $AX = XA = AY = YA = E$ を満たすとする。この時 $X=Y$ であることを証明しなさい。

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仮定から $AX=E$ かつ $YA = E$ が成り立つ。

また, $E$ は単位行列なので $X = EX$ かつ $Y = YE$ であることに注意すると

$X =EX = (YA)X = Y(AX) = YE = Y$

よって $X = Y$ が成り立つ。

このことから, 逆行列は存在すれば唯一つであることがわかります。

$Q6$.
行列 $A$ が正則であるとする。この時 ${}^t\!A$ も正則であり $({}^t\!A)^{-1} = {}^t\!(A^{-1})$ が成り立つことを証明しなさい。

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一般に, 行列 $A$, $B$ に対し

${}^t\!(AB) = {}^t\!B{}^t\!A$

が成り立つので

${}^t\!A{}^t\!(A^{-1}) = {}^t\!(A^{-1}A) = {}^t\!E=E$

また

${}^t\!(A^{-1}){}^t\!A = {}^t\!(AA^{-1}) = {}^t\!E=E$

よって ${}^t\!(A^{-1})$ は ${}^t\!A$ の逆行列である。

このことから, 転置行列の逆行列は, 逆行列の転置行列になります。

$Q7$ [応用問題].
複素数 $\alpha = a + bi$ ($i$ は虚数単位) に対し, $2$ 次の正方行列 $A_{\alpha}$ を

$A_{\alpha} = \begin{pmatrix} a & -b \\ b & a \end{pmatrix}$

と定める。この時, 次が成り立つことを証明しなさい。

(1) $A_{\alpha}$ が正則 $\Leftrightarrow$ $\alpha \not=0$
(2) $\alpha\not=0$ の時, $A_{\alpha}^{-1} = A_{\alpha^{-1}}$
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(1)
$\alpha=a+bi$ とする。 $\alpha =0$ の時 $A_{\alpha}$ は零行列なので, 正則でない。

よって $A_{\alpha}$ が正則ならば $\alpha\not=0$ である。

逆に $\alpha \not=0$ の時, $a^2 + b^2\not=0$ より逆行列の公式から, $A_{\alpha}$ は逆行列

$A_{\alpha}^{-1} = \dfrac{1}{a^2 + b^2}\begin{pmatrix} a & b \\ -b & a \end{pmatrix}$

を持つ。よって主張が成り立つ。

(2)
$\alpha\not=0$ とすると

$\alpha^{-1} = \dfrac{1}{a+bi} = \dfrac{a-bi}{(a+bi)(a-bi)} = \dfrac{a}{a^2+b^2} - \dfrac{bi}{a^2+b^2}$

よって

$A_{\alpha^{-1}} = \dfrac{1}{a^2+b^2}\begin{pmatrix} a & b \\ -b & a \end{pmatrix} = A_{\alpha}^{-1} $

である。