消去法 例題集

$Q1$.
次の連立方程式を消去法を使って解きなさい。

$\left\{ \begin{aligned} x+3y & = -4 \\ 2x+7y & = -11 \end{aligned}\right.$
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$x=5$
$y=-3$

拡大係数行列は

$\begin{pmatrix}1 & 3 & -4\\ 2 & 7 & -11 \end{pmatrix}$

となります。

$2$ 行目から, $1$ 行目の $2$ 倍を引くと

$\begin{pmatrix}1 & 3 & -4\\ 0 & 1 & -3 \end{pmatrix}$

方程式の形に直すと

$\left\{ \begin{eqnarray*} x + 3y =-4 \\y = -3 \end{eqnarray*}\right.$

よって第 $2$ 式から $y=-3$ であり, 第 $1$ 式に代入すれば $x= -4+9=5$ となります。

$Q2$.
次の連立方程式を消去法を使って解きなさい。

$\left\{ \begin{aligned} x+2y+ 3z = 14 \\ 2x+3y + 4z = 20 \\ 2x+2y+3z= 15 \end{aligned}\right.$
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$x=1$
$y=2$
$z=3$

拡大係数行列は

$\begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 & 14 \\ 2 & 3 & 4 & 20 \\ 2 & 2 & 3 & 15 \end{pmatrix}$

となります。

$2$ 行目と $3$ 行目から, $1$ 行目の $2$ 倍を引くと

$\begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 & 14 \\ 0 & -1 & -2 & -8 \\ 0 & -2 & -3 & -13 \end{pmatrix}$

$3$ 行目から, $2$ 行目の $2$ 倍を引くと

$\begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 & 14 \\ 0 & -1 & -2 & -8 \\ 0 & 0 & 1 & 3 \end{pmatrix}$

方程式の形に直すと

$\left\{ \begin{aligned}x+2y+3z &= 14 \\ -y-2z &= -8\\ z&=3\end{aligned}\right.$

第 $3$ 式から $z=3$ であり, 第 $2$ 式に代入すれば $y = -6+8=2$ となることがわかります。

さらにそれらを第 $1$ 式に代入すれば $x = 14 - 4-9=1$ となります。

$Q3$.
次の連立方程式を消去法を使って解きなさい。

$\left\{ \begin{aligned} x-2y- 5z &= -2 \\ -x+y + 3z & = 1 \\ 2x-y-4z&= -1 \end{aligned}\right.$
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$x=t$
$y=1-2t$
$z=t$ ($t$ は任意の数)

拡大係数行列は

$\begin{pmatrix} 1 & -2 & -5 & -2 \\ -1 & 1 & 3 & 1 \\ 2 & -1 & -4 & -1 \end{pmatrix}$

となります。

$3$ 行目から $1$ 行目の $2$ 倍を引き, $2$ 行目に $1$ 行目を加えると

$\begin{pmatrix} 1 & -2 & -5 & -2 \\ 0 & -1 & -2 & -1 \\ 0 & 3 & 6 & 3 \end{pmatrix}$

$3$ 行目に $2$ 行目の $3$ 倍を加えると

$\begin{pmatrix} 1 & -2 & -5 & -2 \\ 0 & -1 & -2 & -1 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \end{pmatrix}$

方程式の形に直すと

$\left\{ \begin{aligned}x-2y-5z &= -2 \\ -y-2z &= -1\end{aligned}\right.$

第 $2$ 式から $y=1-2z$ であり, これを第 $1$ 式に代入すると

$x = -2 + 2(1-2z) + 5z = z$

$z$ は任意なので, この方程式の解は $t$ を任意の数として

$\begin{cases}x = t \\ y =1 -2t \\ z = t \end{cases}$

となります。

$Q4$.
$2$ 次の正方行列 $A$ に対し, 以下の問いに答えなさい。

(1) 「$1$ 行目を $c~(\not=0)$ 倍する」という行基本変形は, $A$ に $P =\begin{pmatrix} c & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}$ を左からかける操作に等しいことを確認しなさい。
(2) 「$2$ 行目に $1$ 行目の $c$ 倍を加える」という行基本変形は, $A$ に $Q =\begin{pmatrix} 1 & 0 \\ c & 1 \end{pmatrix}$ を左からかける操作に等しいことを確認しなさい。
(3) 「$1$ 行目と $2$ 行目を入れ換える」という行基本変形は, $A$ に $R =\begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix}$ を左からかける操作に等しいことを確認しなさい。
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$A = \begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} \\ a_{21} & a_{22} \end{pmatrix}$ とする。

(1)
$PA$ を計算すると

$PA = \begin{pmatrix} c & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} \\ a_{21} & a_{22} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix}ca_{11} & ca_{12} \\ a_{21} & a_{22} \end{pmatrix}$

となり, これは $A$ の $1$ 行目を $c$ 倍した行列である。

(2)
$QA$ を計算すると

$QA = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ c & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} \\ a_{21} & a_{22} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix}a_{11} & a_{12} \\ ca_{11} + a_{21} & ca_{12} + a_{22} \end{pmatrix}$

となり, これは $A$ の $2$ 行目に $1$ 行目の $c$ 倍を加えた行列である。

(3)
$RA$ を計算すると

$RA = \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} \\ a_{21} & a_{22} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix}a_{21} & a_{22} \\ a_{11} & a_{12} \end{pmatrix}$

となり, これは $A$ の $1$ 行目と $2$ 行目を入れ換えた行列である。

この例題から分かるように, 行基本変形はある行列を左からかける操作に対応します。

また $P,Q,R$ のような, 行基本変形に対応する行列を 基本行列 といいます。

$Q5$.
$3$ 次の正方行列 $A$ に対し, 以下の問いに答えなさい。

(1) 「$P$ を左からかける」という操作が「$2$ 行目を $c~(\not=0)$ 倍する」という行基本変形に等しい行列 $P$ を求めなさい。
(2) 「$Q$ を左からかける」という操作が「$2$ 行目に $3$ 行目の $c$ 倍を加える」という行基本変形に等しい行列 $Q$ を求めなさい。
(3) 「$R$ を左からかける」という操作が「$1$ 行目と $3$ 行目を入れ換える」という行基本変形に等しい行列 $R$ を求めなさい。
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(1) $P = \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & c & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}$
(2) $Q = \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & c \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}$
(3) $R = \begin{pmatrix} 0 & 0 & 1 \\ 0 & 1 & 0 \\ 1 & 0 & 0 \end{pmatrix}$

$A = \begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13} \\ a_{21} & a_{22} & a_{23} \\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{pmatrix}$ とする。

(1)
$P = \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & c & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}$ として $PA$ を計算すると

$PA = \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & c & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13} \\ a_{21} & a_{22} & a_{23} \\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{pmatrix} =\begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13} \\ ca_{21} & ca_{22} & ca_{23} \\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{pmatrix}$

となり, これは $A$ の $2$ 行目を $c$ 倍した行列になります。

(2)
$Q = \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & c \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}$ として $QA$ を計算すると

$\begin{eqnarray*}QA & = & \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & c \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13} \\ a_{21} & a_{22} & a_{23} \\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{pmatrix}\\[1em] & = & \begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13} \\ a_{21} + ca_{31} & a_{22} +ca_{32} & a_{23} + ca_{33} \\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{pmatrix}\end{eqnarray*}$

となり, これは $A$ の $2$ 行目に $3$ 行目の $c$ 倍を加えた行列になります。

(3)
$R = \begin{pmatrix} 0 & 0 & 1 \\ 0 & 1 & 0 \\ 1 & 0 & 0 \end{pmatrix}$ として $RA$ を計算すると

$RA = \begin{pmatrix} 0 & 0 & 1 \\ 0 & 1 & 0 \\ 1 & 0 & 0 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13} \\ a_{21} & a_{22} & a_{23} \\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{pmatrix} =\begin{pmatrix} a_{31} & a_{32} & a_{33} \\ a_{21} & a_{22} & a_{23} \\ a_{11} & a_{12} & a_{13} \end{pmatrix}$

となり, これは $A$ の $1$ 行目と $3$ 行目を入れ換えた行列になります。

$3$ 次の場合も同様に, 行基本変形は基本行列を左からかける操作に対応します。

「$3$ 行目に $1$ 行目の $c$ 倍を加える」や「$2$ 行目と $3$ 行目を入れ換える」等, 他の行基本変形に対応する基本行列も求めてみましょう。